2008年10月22日水曜日

10/17の講義

山崎です。

10/17の講義では、まずはじめに前日の水野先生による「地心館および周辺マップ」を完成させました。
その後、学内の「お気に入りの場」を見つけてもらって、そこでの環境からの刺激と、それに応じる意識の変化を記述してもらいました。

学内における「お気に入りの場」は人それぞれで、屋外ばかりかと思っていたら屋内や個室(トイレの個室も含む!)などもあって、かなりのバリエーションでした。

そのお気に入りの場でリラックスできる体勢でくつろいでもらい、(1)そのとき感じた音や匂いや見たものや風や虫など、環境からの刺激をメモしてもらいました。同時に、(2)そのとき思い浮かべたことの移り変わりもメモしてもらいました。

環境からの刺激は常に複数が同時に自己へと働きかけているものです。ところが僕たちはそれを認知した順に把握する。その場所に最初から響いていた音が耳に入ってきていない場合もあるし、自分が座っているすぐ横にある蜘蛛の巣に気づかないまま遠くを見ている場合もあります。あるきっかけで別の刺激を認知し、それがきっかけでさらに別の刺激を認知することになる、ということの連続を体験してもらいました。

また、そのときに自分が思い浮かべることの変化も体験してもらいました。環境からの刺激が関係して思い浮かべること(学食から食べ物の匂いがした→今日の晩御飯は何にしようかな?)と、環境からの刺激とは一見関係ないような想起のされ方(吉田松陰像の前に座る→今日の夜もバイトがあるんだった。。。)と、2種類についてメモしてもらいました。

こうした「環境からの刺激」と「自分が思い浮かべたこと」の変遷をメモしてもらい、それを教室でまとめてから発表し、全員でその「変遷」を共有しました。

「環境と表現」について考える場合、環境の知覚は人によって違うだけではなく、同じ人でもそのときの状況や時間の経過とともに違った知覚になるということを知ってもらいました。このことは、ユクスキュルという生物学者が「生物から見た世界」という著作のなかでヤドカリの観察を用いて説明していることでもあります。次回は、みんなが環境から感じ取ったことなどを用いて理論的なことを話しつつ、次のワークへ移りたいと思います。

次のワークでは、風景が移り行くことと自分が移動することを同時に記述する方法を開発してみたいと思います。風景を観察していると、目の前を鳥が飛んで行ったり、落ち葉がヒラヒラと落ちたり、友達が寄ってきて挨拶したり話をしたり、虫が自分の腕にとまったりします。こうした風景や環境の変化をどのように記述・記録すればいいのでしょうか。そして、さらに複雑なことに、観察者本人も移動することになりますので、移動すればするほど風景はダイナミックに変化します。木々の間を歩いていたと思えば建築物が出てきて、その建築物の内部へ入っていくことになる。
自分も動くし風景の構成要素も動くという複雑な移動空間認知をどのように記述すればいいのか。この問題をランドスケープアーキテクトのローレンス・ハルプリンという人は「モーテーション(モーション+ノーテーション)」と名づけました。モーテーションとは彼の造語です。「動き」と「記録」を組み合わせた造語を使うことによって、自身の動きとそのとき認知される連続的な空間の関連性をどう記述していくのか、ということを研究しました。

次回の授業では、みなさんなりにルールをつくって空間の記述を行ってもらおうと思っています。まずは止まった状態で、環境の変化だけを記述する方法を開発してもらいます。次に、観察者自身が動き出したときの空間の変化を記述する方法を開発してもらいます。

ひょっとしたら、次回の授業では「止まった状態における空間の変化」を記述するだけで時間が終わってしまうかもしれませんが。。。

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